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■『10年後、生き残る理系の条件』 逆張りの行動戦略 (2016.12.2)




エレクトロニクス業界のビジネス環境は、想像を絶するほど急激に変化している。こんな厳しい、右肩下がりの中でどうやってエンジニアは生き残れるのだろうか。10年後に。これが本書のテーマだ。著者は「エンジニアは変わらなければいけない」と主張する。実現のための行動戦略としては「逆張り」を挙げている。新しい分野へ挑戦すること、前例がないことをやるということだ。だから、事業だろうが個人のキャリアパスだろうが、皆と同じように流行に乗って動いていてはダメ。人生は逆張りだと。

著者、竹内健さんは、中央大学理工学部電気電子情報通信工学科の教授。東大を卒業後、東芝に入社しフラッシュメモリ事業の製品開発プロジェクトに従事。半導体メモリ、SSD、コンピュータシステムの研究・開発で世界的に知られる。2007年に東芝を退職し東京大学大学院 准教授を経て、2012年から現職。フラッシュメモリという最新技術製品で、世界のライバルメーカーを相手に熾烈な開発競争を戦いぬいてだけに、その言葉には説得力がある。



いまや「昨日の勝者」が「明日の敗者」になる時代。エルピーダメモリは2012年に倒産し米国のマイクロン・テクノロジーに買収された。ところが今ではエルピーダメモリがマイクロン・テクノロジーの急成長の原動力になっているという。業界のランキングはわずか数年の短い期間で変化する。短期的な繁栄に目を奪われてはいけない。

エンジニアは専門性が高いので、企業と運命共同体になってしまうことが多い。荒波にのみこまれて船と共に沈んでいくという危険性がある。企業側もエンジニアに技術開発に集中することを望み、エンジニアも好きな技術の開発に集中していた方が快適であるという心象をもっている。あまりに産業の変化のスピードが速いと、エンジニアのスキルが変化に追従できないことがある。いまや企業は再教育よりも即戦力を中途で外部から採用するようになっている。

エンジニアにとって新たに必要なのは「文系力」だと著者はいう。日本企業では技術を深く理解した上でより広い視野で事業を俯瞰できる人が決定的に不足している。だから、文系力――組織運営について研究する経営学、財務やマーケティングなど――を備えた人材が求められる。なぜ組織は同じ失敗を繰り返すのか、そもそも社会を構成する人間とは何なのか、などハイテク産業でもローテク産業でもいつの時代の世界のどこにでも通じる、普遍的な内容だ。

英語はエンジニアの命綱である。日本語しかできないというのは、流動性の低い日本の労働市場にロックインされてしまうということ。これは大きなリスクである。英語がコミュニケーションの手段として、事実上の標準となっている。

もはやコラボなしでできる仕事はなくなった。チーム運営のリーダーシップをより広い範囲に展開するようにしよう。これは元々日本の得意ワザだ。日本の製造業、モノづくりの世界ではチームで作業することが一般的であり、研究開発、設計、製造、試験といった異なる技術部門を束ねるリーダーシップに秀でている。

いまや、ハードとソフトを組み合わせないと製品やサービスの競争力を出しにくくなっている。例えば、一見ハード技術だけに見えるSSD(ソリッド・ステート・ドライブ。フラッシュメモリを使用した記憶装置)にしても同じだ。データを最適なメモリに配置するアルゴリズムやメモリのエラーを訂正するソフト技術が、SSDの性能や信頼性に最終的に大きな影響を与えるのだから。ハードのみならずソフトまで手がけ、トータルのソリューションとして顧客に提供することを考えよう。

徹底的に使う人の立場に立って、商品や技術を考えることが必要。社会に貢献できる技術こそが、ひいてはビジネス的にも成功につながる。スティーブ・ジョブズは24時間,365日いつもユーザーのことを考えていたと言われる。日本のエンジニアは、今まで高速や大容量といったわかりやすい性能向上を狙った製品を開発することに集中しすぎており、ユーザーエクスペリエンスをそれほど重視してこなかった。

これからは、個々人が経営者的な視点を持って、自分の技術によってどのようなサービスを実現できるか、どのように技術をマネタイズするのかを考えなければならない。異分野や異業種とのコラボや、チームマネジメントが求められる。環境の変化をとらえ自分の生き延びる道を求めて牙を磨き、仲間とチームを作ることだ。これは、人類誕生以来のはるかな過去から続いてきたありよう。エンジニアも変わることだ。生き残るために。


●著者の考えは21のアドバイスとしてまとめられている。
【1】生き残るエンジニアの条件1 会社の危機を嗅ぎ分ける力を持つ
【2】生き残るエンジニアの条件2 自分自身に対する客観的な視点をもつ
【3】自分の弱みを知れば、強みに変えることもできる
【4】専門性を極めたら、他分野への技術力の活かし方を教える
【5】よい時代は長く続かないと覚悟し。次の苦境に備える
【6】会社の凋落とともに個人の価値が下がる前に、飛び出す勇気を持つ
【7】技術トレンドの追求をするだけでは、世界的な競争で勝つのは難しい
【8】もう会社は守ってはくれないが、それを新しく生まれたチャンスと考える
【9】多面的な経営者の視野を持つ
【10】積極的に自分をアピールし、異分野の人とも知り合うチャンスを増やす
【11】自分の強み・技術を抽象化し、幅広い分野で役立てることをアピールする
【12】マネタイズの視点を持ち、ソフトとハードの両輪でソリューションを提案する
【13】ユーザーの「新しい価値」を創り出すために、リベラルアーツの知識と経験を総動員する
【14】社内でバラバラに存在するデータを統合・活用する
【15】閉鎖的な同調圧力にとらわれないで、突き進む力を持つこと
【16】家庭をリスク分散の一つの場として考える
【17】課題解決の前に、良質な情報のインプットをたくさん行うこと
【18】英語にチャレンジする。社会人になってからでも決して遅くない
【19】コアの技術はいつの時代にも必ず必要とされる。「人」を見て判断し、飛び込んでみる
【20】シンプルなチャレンジのルールを日々愚直に実践する
【21】「もうダメだ」と思うか、「まだまだ自分は勝てる」と思うかが、勝負の分かれ目


■『10年後、生き残る理系の条件』竹内健、朝日新聞出版、2016/1


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